「おいしい」以外の言葉が出てこない。ウイスキーを飲み始めた頃、誰もが通る場所です。
でもテイスティングはセンスではなく手順です。順番を守って、注意を向ける先を変えるだけで、拾える情報は驚くほど増えます。この記事では、家でできるテイスティングの手順を、道具から言葉の選び方までまとめます。
準備するもの
- グラス|口がすぼまった形のもの。香りが集まる
- 常温の水|加水用とチェイサー用。できれば軟水
- 時間|最低20分。急ぐと何もわからない
グラスで結果が変わる
ロックグラスのような広口のグラスでは、香りが上に逃げてしまいます。チューリップ型(グレンケアンなど)を使うと、香りがグラスの上部に集まり、はっきり嗅ぎ取れるようになります。
専用グラスがなければ、ワイングラスや小さめのブランデーグラスでも代用できます。とにかく口がすぼまっていることが条件です。ここは道具でごまかせない部分なので、最初に投資する価値があります。
手順①|色を見る
白い紙か明るい壁を背景に、グラスを傾けて色を見ます。
- 淡い黄金色|バーボン樽中心。軽やかな味の可能性が高い
- 濃い琥珀色〜赤褐色|シェリー樽の影響。濃厚な甘さの予想
- とろりと脚を引く|度数が高いか、オイリーな酒質
ただしカラメル着色をしているボトルもあるため、色だけで断定はできません。「Natural Colour」表記があれば、色は樽由来だと信頼できます。ラベルの読み方で確認できます。
手順②|香りを取る(ここが8割)
味覚で判別できるのは、甘い・しょっぱい・酸っぱい・苦い・旨いの5つだけ。「味わい」と感じているもののほとんどは、実は香りです。だから香りに時間をかけるほど、拾える情報が増えます。
- 1回目|グラスを鼻から離し気味に。まず全体の印象
- 2回目|口を軽く開けて嗅ぐ。アルコールの刺激が和らぐ
- 3回目|少し近づけて、細かい香りを探す
- 10分置いてもう一度|空気に触れて開いた香りを取る
鼻を近づけすぎるとアルコールの刺激で鼻が麻痺します。少し離すのがコツ。うまく取れないときは、手の甲に1滴垂らして嗅ぐと、アルコールが飛んで香りだけが残ります。
手順③|口に含む
少量を口に含み、すぐ飲み込まずに舌の上で転がします。10秒ほどかけて、口全体に広げてください。
- アタック|口に入れた瞬間の第一印象
- ミドル|口の中で広がる味の厚みと質感
- フィニッシュ|飲み込んだ後に残る余韻
最初の1杯目はアルコールの刺激で味がわからないのが普通です。1杯目は口を慣らすためのもの、と割り切ってください。本番は2杯目からです。
手順④|加水して変化を見る
ここが最も面白い工程です。水を数滴加えると、香り成分が揮発しやすくなり、隠れていた香りが立ち上がります。
- 数滴|香りだけを開かせる
- ティースプーン1杯|刺激が和らぎ、甘みが出る
- 1:1(トワイスアップ)|香りが最も開く。プロが使う比率
同じ1本が、加水量で別の酒に変わります。特にカスクストレングスでは差が劇的です。仕組みは度数40%とカスクストレングス|加水で味が変わる理由で解説しています。
言葉にするコツ|4つの引き出し
香りの表現に困ったら、この4つのカテゴリーから探すと出てきます。
- 果物|リンゴ、洋ナシ、レモン、レーズン、パイナップル
- 甘いもの|バニラ、ハチミツ、カラメル、チョコレート、黒糖
- 木・スパイス|オーク、シナモン、胡椒、ナツメグ
- その他|煙、潮、ヨード、革、麦、草
コツは正解を当てにいかないこと。「なんとなくリンゴっぽい」で十分です。感じ方には個人差があり、公式のテイスティングノートと違っても間違いではありません。
メモを残すと成長が速くなります。銘柄名・日付・グラス・加水量・感じた香りを3語だけ。これを続けると、半年後に自分の好みの傾向がはっきり見えてきます。
比較すると一気にわかる
1本だけを飲んでも、その特徴は掴みにくいものです。2本を並べて飲み比べると、違いが浮き上がってきます。
- 樽の違い|バーボン樽 vs シェリー樽
- 産地の違い|スペイサイド vs アイラ
- 年数の違い|同じ蒸溜所の12年 vs 18年
特に年数違いの飲み比べは学びが大きい方法です。2026年9月発売の「ボウモア シェリー」は12年・15年・18年が揃うため、年数による香味の違いを比べる題材として使えます。
まとめ
- 口がすぼまったグラスを使う。ここは道具でごまかせない
- 味わいの正体はほぼ香り。香りに最も時間をかける
- 1杯目は口を慣らすため。判断は2杯目から
- 加水で香りが開く。同じ1本が別の酒になる
用語で詰まったらウイスキー用語辞典へ。飲んだ後のボトル管理は開栓後の保存方法にまとめました。飲み方のバリエーションは【初心者向け】ウイスキーの美味しい飲み方3つのポイントをどうぞ。
